令和3年11月26日(金)・27日(土)の二日間、日本技術士会四国本部主催の「第74回CPDセミナー・公開講座・防災講演会・修習セミナーおよび見学会」と共催で令和3年度 愛媛県技術士会の忘年会を、えひめ共済会館において開催いたしました。
香川県、徳島県、高知県からも多数ご参加いただき、セミナー・忘年会合わせて49名余りのご参加を得て大いに賑わいました。
皆様、お忙しい中ご参加頂きありがとうございました。
———– 1日目 プログラム ———–
11月26日(金)13:00 ~ 17:00
【公開講座】
演 題:「伊能忠敬と伊予の測量家」
講 師:愛媛県歴史文化博物館 学芸課長 井上 順 氏
【防災講演会】
演 題:「松山全世代型防災教育の展開~大規模災害に備える人材教育~」
講 師:愛媛大学特命教授 矢田部 龍一 氏
【CPDセミナー】
演 題:「脱炭素と地層処分~環境への適合~について」
講 師:東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻 准教授 小宮山 涼一 氏
(リモート講演:資源エネルギー庁 青田 氏)
【修習技術者支援セミナー】
演 題:「技術士と資格制度の概要」
講 師:四国本部 修習技術者支援委員会委員 藤本 憲洋 氏
【第2次試験合格者紹介】
【忘年会・懇親会】18:00 ~ 20:00
———– 2日目 プログラム ———–
11月27日(土)8:30 ~ 12:30
【見学会】
松山市景観整備~「花園町通り」のリニューアルと「松山市駅前広場」開発~
案内:松山市役所都市・交通計画課 遠藤 敬二郎 氏・柚山 智範 氏
葉佐池古墳見学(松山市北梅本町)
案内:松山市立埋蔵文化財センター所長・松山市考古館館長 梅木 健一 氏
———– 開催行事の概要 ———–
■■■ 11月26日(金)■■■(セミナー)
開催に先立ち、(公社)日本技術士会四国本部 冨士 副本部長より開会の挨拶を頂きました。
1.公開講座
「伊能忠敬と伊予の測量家」
(講師)愛媛県歴史文化博物館 学芸課長 井上 順 氏
井上氏からは、江戸時代の測量図と言えば実測で日本地図を作った伊能忠敬が有名であるが、実はそれより以前にも各地には優れた測量技術者がいたことについて講義をして頂きました。
愛媛県においては、伊能忠敬の測量にも協力を行った測量技術者である、宇和島藩「小川五兵衛」「小川五郎兵衛」、大洲藩「東寛治」の業績をご紹介を頂きました。
当時の地図は絵図風に書かれており、山・水路・耕作地などの情報も豊富で、現在の航空写真と重ねてもかなり一致する非常に精度の良い絵図であることに驚かされました。
また、藩としても境界の紛争解決等、絵図は政治的に非常に重要なものであり、測量技術に関して藩として組織化の動きもあった時代背景についてもご講義頂きました。
2.防災講演会
「松山全世代型防災教育の展開~大規模災害に備える人材教育~」
(講師)愛媛大学特命教授 矢田部 龍一 氏
矢田部教授からは、近年世界的に増大する自然外力に対してハード対策のみでは想定内の外力までしか対応できないことから、今後は様々なソフト施策を取り入れる必要があるとのお話がありました。
中でも「自律性、継続性、効果」の観点から「事前復興デザイン、防災教育」を強く進めていく必要があり、特に防災教育の分野で「根こそぎ教育するような仕組みづくり」を目指して「松山市50万人防災教育モデル」を実施しているとのことです。
・松山防災リーダー育成センターの設置(防災エデュケーターの育成)
・小中高生加入のジュニア防災リーダークラブ
・指導者としての大学生の学生防災リーダークラブ
・市内小学4年、中学1年生対象の防災授業
・自主防災組織と連携した防災教育
・マイタイムライン作成(市民向け、学校教育、福祉関連施設)
これらの教育モデルをさらに堅実なものにするためにも、技術士会に「松山防災リーダー育成センター」への協力要請がありました。
3.CPDセミナー
「脱炭素と地層処分~環境への適合~について」
(講師)東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻 准教授 小宮山 涼一 氏
小宮山教授からは、カーボンニュートラルと急増する電力需要対応の両立のための技術について、問題点を踏まえ分かり易くご説明して頂きました。
今後社会生活に欠かせない電力に関して、再生可能エネルギーだけでは「需給バランスの調整対応」「蓄電技術」「送電線」等を考えると、発電コスト自体は安くとも電力網として考えた場合は非常にコストが高いとのお話でした。
再生可能エネルギーだけに頼るのではなく、安全性を確保した上で原子力エネルギーとの共存を考えた議論が必要であると感じます。
(リモート講演)資源エネルギー庁 青田 氏
講演の最後に、資源エネルギー庁 青田氏より「高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会」の内容についてセミナー会場とオンラインで結んで講演がありました。
核廃棄物の安全な処分方法として現在取り組んでいる地層処分について、安全技術面・地下環境面・建設技術面からの取り組みについてご紹介いただきました。
東京電力福島第一原子力発電所事故が実際に発生した今、地層処分は受益地域と非受益地域が異なることから社会的合意についても大きな課題が残ると感じました。
4.修習技術者支援セミナー
(講師)四国本部 修習技術者支援委員会 藤本 憲洋 氏
修習技術者支援セミナーは、藤本修習技術者支援委員より技術士合格者の推移や技術士試験試験制度について詳しく説明をして頂きました。
活動の中で、先日開催した愛媛大学学生とのオンラインセミナーの実例についてご紹介していただきました。
当セミナーでは、学生側から技術士の役割および技術士制度についての質問も多数あったようです。
今後、こういった学生と接する機会をもっと増やし、技術士会としても積極的に「エンジニアを目指す学生」「若手技術者」に情報発信してゆくことが大切だと感じます。
5.R1・R2技術士第二次試験合格者及び新入会者の紹介
難関の第二次試験、合格おめでとうございます。(一瞬だけマスク外してもらいました)
その後恒例の「愛媛県技術士会忘年会」へと移りました。
愛媛県技術士会 増田会長の乾杯の音頭により忘年会が始まりました。
今年は本部例会との共催となったこともあり、県外からも多数のご出席を頂いており、四国4県の懇親を深める良い機会となりました。
また、講師の井上様・矢田部教授・小宮山教授にも講演後引き続きご出席して頂きお話をお伺いすることができました。
最後は日本技術士会四国本部 栗本 事務局長の中締めにより、忘年会も無事終了することができました。
来年もまた、皆様の多数のご参加をお待ちしております。
■■■ 11月27日(土)■■■ (見学会)
松山市景観整備~「花園町通り」のリニューアルと「松山市駅前広場」開発~
案内:松山市役所都市・交通計画課 遠藤 敬二郎 氏・柚山 智範 氏
翌27日は、松山市役所 遠藤氏・柚山氏から詳しい説明を受けながら、市駅前銀天街側から花園町通りの間を移動しました。
現在、花園町通りは「電線地中化」「自転車専用道の整備」「歩行空間の確保」「自然石や鋼材、県産木材を用いた景観の創生」等によるリニューアルが完了しており、要所要所で整備の概要についての説明を受けながら、実際の歩道空間とその効果を体感することができました。
さらに、松山市は中心市街地の活性化を推進するため花園町通りと銀天街をつなぐ「松山市駅前広場」の整備を進めており、その影響や効果を調べるために交通規制を伴った社会実験が先日終了したところであるとのお話でした。
葉佐池古墳見学(松山市北梅本町)
案内:松山市立埋蔵文化財センター所長・松山市考古館館長 梅木 健一 氏
花園町通り見学後は、バスで松山市北梅本町の「葉佐池古墳」へ移動しました。
梅木館長の古代衣装のコスプレで熱い出迎えを受け、先ずは館内で「葉佐池古墳」の時代背景等について分かり易くご紹介いただきました。
「葉佐池古墳」は平成4年の造成時に偶然発見され、未盗掘のままであったことから副葬品の状態も良く、古墳時代の葬儀の様子や地域性が良くわかる貴重な古墳であることが認められて、現在国指定史跡になっています。
古墳時代の葬儀については、人骨にハエのさなぎ殻が付着していたことから死後かなりの間外の場所に安置されていたことが推察され、古代の儀礼「殯=もがり」を考古学的に証明する貴重な資料となったとのことです。
座学の後は、実際の場所において公開されている1号石室を見学しました。
葬られた人物は、この地が古墳時代に「須恵器」の生産地であったことから、当時のリーダー的な人物ではなかろうかとのお話でした。
葉佐池古墳前にて(クリックで拡大)
地元に居ながらも新しい発見が多数あり、大変勉強となる見学会でした。